地名をキーワードにして地域の歴史を掘り起こすページです

地名の解説

岡山県内の製鉄(たたら)地名

はじめに

 弥生時代から近代に至るまで日本は瑞穂の国でした。
 神社の本殿は弥生時代の米倉がルーツと言われています。
 平城宮の木簡には「…米○斗」と書かれています。
 近世になって領地は米の石高で何万石と決められました。

 歴史の表舞台に登場したのは常に米でした。
 その米の生産を支えたのは鉄ですが、農具や農業土木用の工具類の鉄生産については表舞台に殆ど登場しません。

 岡山県内の小字を丹念に調べて見ますと、製鉄関係の地名がたいへん多いことにびっくりします。

 砂鉄の主産地である県北に多いのは当然ですが、県全域に分布しています。

 そして

  • 砂鉄産地
  • 鉄穴流し
  • タタラ
  • 鍛冶、鋳造
  • ノロ(スラグ)処分場
  • 製品配送センター
  • 従業員住居地
  • 賃金・代金支払所
  • 鉄穴流し後の廃砂の堆積場

などの生産の流れがすべて地名になっていることに驚きます。

 製鉄は歴史の裏方的な存在ですが、地名では花形と言っても過言ではありません。

 後述する「市町村別製鉄小字一覧」をご覧になればそのことが納得して頂けると思います。

 地名の意味を正確に把握するためには、遺跡、遺物の確認とか、地域に伝わる伝承、地形などを現地で調査する必要があります。

 しかし土地台帳から地名地図を作って現地で調査したものはごく一部です。
 本稿に収録しているものは、ほとんどが現地調査などがされておりません。

 従って収録した地名の中に、製鉄関係以外の地名が混入しているおそれが多分にあります。
 ご指摘を頂ければ有り難いと思います。

 本項の製鉄関係地名は、『角川日本地名大辞典』岡山県版の「小字一覧」と、一部の市町村史を参照して作成しました。
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収録した市町村名

収録した市町村は次の通りです。

○主として高梁川水系

  • 新見市(旧大佐町・旧新見市)
  • 高梁市(旧川上町)
  • 井原市(旧井原市・旧美星町)
  • 総社市(旧総社市・旧清音村)
  • 笠岡市
  • 倉敷市(旧倉敷市・旧船穂町)
  • 早島町。

○主として旭川水系

  • 新庄村
  • 真庭市(旧中和村・旧八束村・旧川上村・旧美甘村・旧久世町・旧北房町)
  • 津山市(旧久米町)
  • 岡山市(旧建部町・旧御津町・旧岡山市・旧灘崎町・旧瀬戸町)
  • 玉野市

○主として吉井川水系

  • 鏡野町(旧上斎原村・旧鏡野町・旧富村)
  • 美作市(旧東粟倉村・旧大原町・旧勝田町・旧英田町)
  • 勝央町
  • 美咲町(旧柵原町・旧美咲町)
  • 赤磐市(旧吉井町・旧赤坂町・旧山陽町・旧熊山町)
  • 和気町(旧佐伯町・旧和気町)
  • 備前市(旧吉永町・旧備前市・旧日生町)
  • 瀬戸内市(旧長船町・旧邑久町・旧牛窓町。

 以上の旧市町村を含め46市町村です。
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地名の分類

 前記の46市町村の総小字から採取した製鉄地名を、次の11項目に分類しました。

  • 砂鉄産地

   金山・赤・黒・倉(蔵・椋)・砂・須賀・菅・芦・種・草・カケ・蟹・
   サナ・サム・サヒ・サビ・桜・笹・シブ・菖蒲・勝負・祖父・祖母・
   ソウズ・崩・ツエ・ズリ

  • 鉄穴流し

   井手・藤(葛・オドロ)・舟・池・金洗場・樋(ひ)

  • たたら

   鈩・釜・鎌・鍋・湯・閂(貫木・貫抜)・福・吹・扇・袋・代(よ)・日・火・釜土

   柴(芝)・炭窯

  • 配送

   駄・馬

  • 鍛冶・鋳造

   鍛冶屋・イモジ・芋

  • ノロ

   ノロ・梅

  • 廃砂

   ニゴ・塩

  • 従業員住居

   金子・梨・柿。

  • 賃金・代金支払場

   勘定・算

  • その他の地名

   ヒナ・朴・鶯
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地名の解説

 前記の分類に従って解説し、地名の一部を例示しています。なお現地調査など行っておりませんので、解説には確定的な表現を避けています。

砂鉄産地

金山(かなやま) 

 金・銀・銅・鉄などを産出する山をすべて金山と称しています。
 県内の金山は鉄山(かなやま)が主で、次いで銅山が多いと思います。

 「金山」(真庭市阿口)
 「金山」(高梁市川上町地頭)。

 赤は本来銅の色で、銅のことをアカガネと言います。
 しかし県内の赤地名の大部分は、風化した花崗岩に含まれている鉄分が赤くなっていることに由来していると考えられます。

 しかし鉄や銅と関係のない赤地名もありますので、後述する「市町村別製鉄小字一覧」には、参考地名(※欄)に掲載しています。
 
 「赤砂」(総社市中尾)
 「赤峪」(鏡野町岩屋)
 「赤岳・赤地・赤池」(岡山市北区建部町和田南)。

 黒は本来鉄の色で、クロガネは鉄の古称です。砂鉄の黒色から産地地名になったと思います。
 黒田など「田」がつく場合、田には水田の意の他に「場所」の意味があると言われています。
 そうしますと黒田は「砂鉄を産する所」という意味になります。
 
 またクロには平地で盛り上がった所を指す「畔(くろ)」があり、黒に当て字されている場合があると思われます。
 黒は紛らわしい地名です。

 「黒田」(赤磐市多賀)
 「黒尾」(岡山市東区瀬戸町弓削)
 「黒谷」(総社市久代)
 「大黒山」(倉敷市木見)
 「黒取岩」(真庭市樫西)。

倉(蔵・椋〈くら〉)

 クラは黒と同義でクロ→クラと転訛したと考えられます。

 クラには鞍があります。鞍は馬具ですが、谷などのくぼんだ地形を鞍部と言います。しかし私の調査ではこのような地形は谷・窪・久保・佐古・迫・峪・逧などで、鞍地名はありません。

 従って鞍が倉や蔵に当て字されているものもあると思われます。

 また磐座(いわくら)の座(くら)があります。磐座は神が籠もる大石で、地名には 「岩倉」がありますが本項には収録しておりません。

 クラ地名も紛らわしい地名です。

 「大倉山」(鏡野町富西谷)
 「中倉」(新見市大佐大井野)
 「蔵掛」(真庭市下呰部)
 「大蔵元」(岡山市吉村)
 「椋本」(総社市久代)。

 河川の流域などの砂浜に砂鉄に関係しない砂地名があり紛らわしいのですが、砂鉄の意である砂地名もかなりあると思います。

 「坂井砂・砂田・奥砂・長砂・大西南砂・田広木西南砂」(総社市久代)
 「赤砂・水ヶ砂・ノン砂・大砂・堂砂・砂東・下砂」(総社市中尾)
 「砂黒」(岡山市北区御津中牧)。

須賀

 州処(すか)が語源という説があります。須賀は一般的には川岸や海岸で砂が丘状になった地形を指します。

 上流に砂鉄産地があれば、このような場所には川砂鉄が溜まりやすいので産鉄地名になっています。

 しかし産鉄とは関係のない地名も多いと思います。

 「中須加」(備前市三石・和気町保曽・総社市三因)。

 スゲ(菅)の古語はスガですが、スガ(須賀)の当て字という説と、菅の生える所には砂鉄が多いという説があります。

 島根県飯石郡吉田村菅谷(すがや)の「菅谷鑪」は有名です。
 新見市の地区名「菅生」は大産地を象徴していると思います。

 菅は県内で最も多い産鉄地名の一つです。

 「菅ヶ谷」(真庭市鍛冶屋)
 「菅ヶ乢」(真庭市三崎)
 「菅原」(瀬戸内市邑久町山田庄)
 「南菅・北菅」(総社市延原)。

 菅谷鑪で有名な島根県吉田村の「芦谷」、同県三隅町の「芦谷」、兵庫県「芦屋」、福岡県「芦屋」などは砂鉄の大産地といわれています。

 芦は鉄分を多く含んだ土地では、鉄バクテリアの作用で根に褐鉄鉱の団塊が形成されると言われています(真弓常忠『古代の鉄と神々』)。

 鉄を生む芦が後に砂鉄の意として通用するようになったのだろうと思います。

 またアシには葬地を意味するものがあり注意が必要です。

「芦谷」(真庭市上徳山)
「芦谷」(真庭市樫西)
「芦ヶ峪」(津山市油木上)
「大芦」(美作市上山)。

 タタラの工程で、炭と砂鉄を交互に炉に入れる作業があります。
 砂鉄を炉内に振りかけるスコップのことを「タネ鋤」と言っています。

 「タネ」とは砂鉄の意です。

 「種石」(鏡野町竹田)
 「種坪」(備前市吉永町福満)
 「種尾」(井原市美星町三山)
 「種井」(総社市種井)。

 草と種は同義と思われます。
 兵庫県宍粟市千種町の町名の種はクサと読み、千種鉄 (ちぐさてつ)で有名です。岡山市東区瀬戸町鍛冶屋の「千種山」もチグサヤマです。

 しかしこの地名は一様ではなく、草刈場などもあると思いますので更に検討が必要な地名です。
 収録している草地名には砂鉄の意以外のものが混入しているおそれがあります。

 「千草」(新見市大佐布瀬)
 「シブ草里」(同大井野)
 「黒草」(赤磐市平山)
 「草生」(岡山市北区御津草生)
 「大草」(鏡野町公保田)
 「草間」(新見市草間)。

カケ

 『日葡辞書』はカケはガケ(崖)の意としています。
 産鉄地では砂鉄を掘った跡が崖状になった所の地名と考えられます。
 鉄穴流しを含めた産鉄地全体を「カケ」という説や、鉄穴と同義と言う説もあります。

 カケはほとんど「掛」の字が当てられています。
 しかし産鉄地ではなく土砂災害で崖になりカケと命名された地名もあるので紛らわしい地名です。

 次項の「市町村別製鉄小字一覧」には産鉄地と関係のないカケが混入しているおそれがあります。

 「掛場」(美作市川上)
 「倉掛山」(岡山市北区建部町角石谷)
 「掛深乢」(瀬戸内市邑久町福谷)
 「掛迫」(高梁市川上町七地)。

 カネ→カニと転訛して蟹に当て字されたもので、砂鉄または鉄を指す場合が多いと されています。
 本項では砂鉄に分類しました。

 「蟹ヶ坪」(井原市東江原)
 「蟹ヶ峪」(津山市宮部下)
 「蟹佐古」(岡山市北区建部町下神目)
 「蟹ヶ市」(同町角石谷)
 「カニ黒」(美作市古町)。

 以下記述する砂鉄産地地名は、古代朝鮮語で鉄を意味するサ・シ・ソの音が語源と思われる地名です。
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「サ」を語源とする地名。

サナ

 『古語拾遺』に

 「天目一個神にくさぐさの刀・斧や鉄鐸(さなき)を作らせた」

 とあります。

 鉄鐸は鉄製の大きな鈴ですが、サナは鉄の意と考えられます。

 三重県多気郡多気町に式内社佐那(さな)神社が祀られています。
 この地方は鉱山が多く金属精錬の地として知られています。
 社名の佐那は鉄の意と思います。

「サナ」(瀬戸内市長船町長船・真庭市下見)
「サナノサコ」(真庭市下和)

 注;長船町長船のサナについては前章で詳述しました。

サム

 秋田県能代市寒川(さむかわ)で製鉄遺跡が確認され「寒川Ⅱ遺跡」と命名されてい ます(谷川健一編『金属と地名』木村清幸執筆)。
 サムと鉄との関係が伺えます。

 「寒砂」(岡山市北区建部町大田)
 「寒風」(瀬戸内市牛窓町長浜・同長船町飯井・備前市佐山)
 「寒佐古」(赤磐市仁堀東)
 「寒河」(備前市日生町寒河(そうご。『平城宮木簡』に〈備前国邑久郡方上郷寒川 里〉があり寒河に比定されています。)

サヒ

 サヒは刃物あるいは鋤の類を意味する古語と言われています。
 鉄との関連で産地名になったと思われます。
 「大サヒ」(岡山市北区建部町三明寺)

サビ

 錆は金属の表面に出来た酸化物のことですが、そのような状況の産鉄地を指してい ると思われます。

 「赤錆」(井原市七日市)
 「赤錆」(真庭市下長田)
 「作備口」(和気町奥塩田)

サクラ

 「佐倉」(赤磐市山口)が参考になります。
 サは砂鉄で、クラ(倉の項参照)も砂鉄の意です。ほとんど「」の字を当てています。

 産鉄地にたいへん多い地名で、産鉄地以外にはこの地名は見あたりません。

 「桜・大桜」(新見市菅生)
 「桜ヶ坪」(岡山市北区建部町角石谷)
 「桜坂」(赤磐市山手)
 「桜神」(倉敷市稗田)。

ササ

 砂鉄の意であるサをササと重ねて笹または篠に当て字されたと思われます。

 伯耆地方に「楽々福(ささふく)神社」が多く祭られています。
 この楽々(ささ)は砂々で砂鉄の意の当て字です。
 福は鈩を吹く意で、産鉄神として関係者の信仰が厚かった神社と言われています。

 「笹ヶ谷」(真庭市別所)
 「笹原山」(真庭市山田)
 「笹池」(岡山市南区灘崎町彦崎)
 「笹山・美笹山」(高梁市川上町下大竹)
 「篠ヶ乢」(真庭市黒田)。

「シ」を語源とする地名

シブ

 シブは鉱床や鉱物が露出している意とする説があります。

 「シブ谷・大シブ谷」(真庭市西茅部)
 「渋川」(赤磐市下仁保)
 「渋川」(玉野市渋川。上流に産鉄地名があります)。

ショウブ

 菖蒲または勝負の字などが当てられています。
 この地名は桜・芦・笹などとともに多い地名です。

 ショウブは古葬地の意という説があります。
 古葬地であれば産鉄地と関係なく命名されますが、調査した四六市町村には製鉄地名が多い地域以外にこの地名は見あたりません。

 従ってショウブは産鉄地名であると思います。

 ちなみに九州の大産鉄地である菊池川流域にある「菖蒲谷」(玉東町)では製鉄遺跡が確認されています。

 ショウブはソブからソウズ→ショウブと転訛したと考えられます。

 「菖蒲ヶ谷」(新見市大佐大井野)
 「ショウブ坪」(高梁市川上町仁賀)
 「菖蒲ヶ迫」(井原市美星町明治)
 「勝負砂」(総社市久代)
 「勝負峪」(真庭市目木)
 「菖蒲谷」(備前市閑谷)。

「ソ」を語源とする地名

ソブ

 ソブは鉄気のある土や水を指す語とされています(白石昭臣『島根の地名辞典』)。 祖父が当て字されています。

 「祖父ヶ山」(美作市川上)
 「祖父ヶ谷」(鏡野町富西谷)
 「祖父谷」(真庭市樫西)
 「祖父山」(備前市吉永町都留岐)。

ソボ

 ソブと同類でしょう。祖母が当て字されています。

 「祖母地」(和気町北山方)
 「祖母田」(鏡野町和田)。

ソウズ

 ソブから転訛したものと考えられます。

 「僧都」(岡山市北区足守)
 「惣津」(井原市青野)
 「ソウヅブロ」(真庭市五明)。

以下の地名は砂鉄を採取した後の大きく崩れた山形地名と思われるものです。
しかし豪雨による地滑りもありますので紛らわしい地名です。

前記の「カケ」と同じ意と考えられます。

次項の「市町村別製鉄小字一覧」には産鉄地と関係のないものが含まれているおそれがあります。

 クズレ(崩)・ツエ(津恵・杖)・ズリなどがあります。

「崩レ山」(美作市川上)
「津恵」(笠岡市新賀)
「大谷杖ヶ峪」(美作市右手)
「杖ノ尻」(真庭市草加部)
「ズリ平」(美咲町大戸下)
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鉄穴流し

井手

 井手は井堰と同義で流れをせき止めている所のことですが、鉄穴流しでは水路のこ とを指し「鉄穴井手」と呼ばれています。
 井手は農業用水路にもあるので注意が必要です。

 次項の「市町村別製鉄小字一覧」には産鉄地と関係のないものが含まれているおそれがあります。

 「鍋井手」(鏡野町香々美)
 「井手ノ谷」(新見市大佐大井野)
 「井手ノ瀬」(新見市西方)
 「井手ノ山」(真庭市上徳山)
 「井手口」(鏡野町上斎原)。

藤(葛・オドロ)

 鉄穴流しをする際に藤の蔓で編んだ筵を水路に敷きその上を流すと、比重の重い砂 鉄は筵の目から下に落ちるので、小石などと選別したと言われています(真弓常忠 『古代の鉄と神々』)。

 この説を裏付けるかのように藤(葛・オドロ)地名は産鉄地に多く見られます。
 オドロは藤などのつるになる植物の岡山県北の方言と言われています(『岡山県大 百科事典』)。

 「金藤」(新見市赤馬。金は砂鉄の意。)
 「藤砂」(総社市山田。砂は砂鉄の意。)
 「惣藤木」(真庭市富尾。村持ちの藤木の意。)
 「大藤」(備前市吉永町都留岐)
 「赤藤」(岡山市北区御津草生。赤は砂鉄の意。)
 「笹ヶ藤」(美咲町塚角)
 「葛佐古」(赤磐市仁堀東)
 「於土路(おどろ)」(井原市東江原)
 「オドロヘ」(瀬戸内市長船町東須恵)。

 注:オドロヘについては前章で詳述しました。
 

 鉄穴流しの水流の早さを調節するための池とする説があります。

 しかし舟地名は「船谷」のように谷全体の名称も多いことから、選別池を含めた舟 地名もあると思われます。

 舟地名には舟運に関係する地名があるので注意が必要です。

 「湯船谷・奥湯船」(鏡野町大町。湯はタタラに関係した地名)
 「船谷」(真庭市鍛冶屋)
 「船坂(ふなざこ)」(美咲町塚角)
 「舟ヶ谷」(新見市大佐布瀬)。

 『新見市史』の「鉄穴流しとたたら製鉄」の項に鉄穴流しの図が載っています。
 止池、大池、中池、乙池、洗場の順に図解しています。

 しかしこれらの個々の池で地名になっているのは洗場のみです。池地名は選別池の 総称と思われます。

 「赤池」(岡山市北区建部町和田南)
 「笹池」(岡山市南区灘崎町彦崎)
 「金子池」(和気町小坂)
 「桜池下」(岡山市東区瀬戸町宿奥)
 「佐倉池」(赤磐市山口)。

金洗場

 砂鉄選別の最後の段階です。砂鉄80パーセントの選別であれば上等と言われてい ます。

 「金洗場」(岡山市北区御津紙工)
 「洗場」(井原市美星町鳥頭)
 「洗通・洗町」(真庭市鍛冶屋)。

 ヒまたはトイと呼んでいます。

 金洗場のことを「洗樋」とも言われますので狭義的には金洗場を指すことになりま す。

 しかし地名では舟地名と同じように、選別施設(止池、大池、中池、乙池、洗場) を総称した樋地名が多いように思われます。
 
 樋は農業用水路にもあるので注意が必要です。

 次項の「市町村別製鉄小字一覧」には産鉄地と関係のないものが含まれているおそれがあります。

 「トイサコ」(新見市大佐上刑部)
 「樋ノ峠」(新見市菅生)
 「樋ヶ谷」(真庭市美甘)
 「樋ヶ迫」(真庭市下呰部)
 「樋ヶ峪」(鏡野町富西谷)
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柴(芝)

 タタラ業者と地元との契約書などに「柴山」とか「柴代」という言葉がでてきます。 柴は炭の原木の意と思われ、産鉄地周辺にシバ地名が多く見られます。

 「柴」のほかに「芝」がありますが柴の当て字と思われます。
 ただし芝をコウゲと呼ぶ地名ですと、草刈場の意などになりますので注意が必要で す。

 「赤柴山」(高梁市川上町地頭)
 「金柴」(美咲町高城)
 「柴倉」(真庭市中津井)
 「柴谷」(赤磐市中勢実)
 「芝床」(美作市川上)
 「芝山」(新庄村鍛冶屋)。

炭釜

 たたら用の炭釜と思いますが、薪炭用の釜もあるかも知れません。

 「炭釜谷」(新見市菅生)
 「炭釜」(真庭市樫東)
 「炭穴」(鏡野町寺和田)
 「炭焼」(新庄村鍛冶屋)。

たたら

 鈩・釜・鎌・鍋・湯・閂(貫抜・貫木)・吹・福・扇・袋・代・日・火・釜土など があります。
 タタラと同義と考えられるものは、このようにたくさんあります。

 しかしこの中には同じ地名でも、鍛冶・鋳造地名が含まれていると考えられます。 区別しにくいので一応たたらに分類していますが課題として残っています。

 「鈩谷」(新見市大佐大井野)
 「鈩屋敷」(新見市馬塚)
 「鈩ヶ原」(真庭市下和)
 「鈩ヶ鼻」(真庭市上福田)
 「タタラ谷」(岡山市南区灘崎町彦崎)

 釜には須恵器などの焼物の釜もあるので注意が必要です。

 「釜ノ久保」(高梁市川上町上大竹)
 「釜ノ元」(井原市美星町明治)
 「釜ヶ谷」(鏡野町富西谷)
 「釜谷」(岡山市北区御津中泉)
 「釜坂」(美作市宮本)。

 釜の当て字と思われます。

 「鎌場」(鏡野町越畑)
 「鎌田」(和気町小坂)

 兵庫県宍粟市千種町の「岩鍋」は千種鉄の大産地で、金屋子神が降臨した伝説で有 名です。

 因みに岩鍋や磐梨のイワは、鉄はイワのように堅いと形容したものと言われていま す。
 そうしますと岩鍋は鉄の鍋すなわち鈩の意になります。
 鍋地名の多くは鈩のことと思います。

 鍋地名の中には台所用品の鍋の姿に似ていることから命名されたものもあるよう です。

 「鍋谷・下鍋谷」(総社市宇山)
 「鍋ヶ谷」(井原市野上)
 「鍋山」(津山市神代)
 「鍋ヶ原」(真庭市中福田)

 鉄が溶解して液状になっている様から命名されたのでしょう。
 鋳造の地名もあると思います。

 湯には温泉の地名があるので注意が必要です。

 「湯谷」(赤磐市中勢実)
 「湯谷尻」(鏡野町上斎原)
 「湯ノ谷」(鏡野町中谷)
 「湯田」(岡山市北区建部町福渡)

閂(貫抜・貫木)

 炉で融解した鉄は湯口から取り出します。
 かね(鉄)を抜くことから「かねぬき」が訛って「かんぬき」になり「閂・貫抜・ 貫木」に当て字されたと考えられます。

 「カンヌキ」(岡山市南区灘崎町迫川)
 「貫抜間」(岡山市東区浦間)
 「カンノキ」(岡山市東区瀬戸町観音寺)
 「東貫抜・西貫抜」(赤磐市上市)
 「閂・貫木」(瀬戸内市長船町土師)

 注:「閂・貫木」については前章で詳述しています。

 次の福・吹・扇・袋の地名は炉内や鍛冶の火床へ風を送り込むことからの命名と思 われます。

 「鉄を吹く」と言われるのは炉に風を送ることですが、製鉄全般を指す意の表現で す。「吹く」が「福」に当て字されたものです。

 古代の伊福部は鍛冶を業とする部民と言われています(谷川健一『青銅の神の足  跡』)。

 伊福は息吹(いふく)の当て字と思います。
 福には福を願う嘉字地名や、現世利益を願う福の神地名があるので注意が必要です。

 「福岡」(真庭市阿口)
 「福ノ原」(美作市古町)
 「福谷」(備前市吉永町福満)
 「福井」(備前市西香登)

 イキブキ・イブキ(息吹)が原形とされています。
 鍛冶もあると思いますが一応たたらに分類しました。

 「フミ吹尻・差吹ヶ乢」(新庄村鍛冶屋)
 「吹原」(総社市新本)
 「吹上」(真庭市上水田)

 炉に風を送ることから命名されたと思います。
 扇子地名もあります。扇は手で風を送りますので、むしろ鍛冶地名が多いかも知れません。

 この地名には扇状地(谷から流れ出た土砂とか、川の曲流部に堆積した砂が、扇のように広がっている土地)という地形地名があると思われますので注意が必要です

 「扇山」(岡山市北区建部町鶴田)
 「扇屋谷」(美作市今岡)
 「扇ノナル」(岡山市北区真星)

 一般的には行き止まりになった袋状の所を言います。
 しかし『角川日本地名大辞典』岡山県版の「小字一覧」で調査した限りでは産鉄地以外には袋地名は見あたりません。

 このことから「吹く炉(ふくろ)」の当て字と思われます。

「風袋」(高梁市川上町三沢)
「袋峪」(真庭市樫東)
「袋尻」(新見市大佐小坂部)

 タタラの一工程を一代(ひとよ)と言うことから地名になったと思います。

 「十代・原拾代・三十代・内神三十代・四十代」(新見市大佐田治部)
 「十代・二十代」(真庭市上呰部)
 「十代田」(岡山市北区御津石上)。

「日」と「火」には両義性があると言われています。
 日→火、火→日になります。

 日地名を日→火と考え本項に分類しました。
 しかし「日」も次項の「火」もタタラの火なのか、鍛冶・鋳造の 火なのかは不明で、課題として残っています。

 「日ノ平」(備前市吉永町都留岐・赤磐市惣分・和気町北山方)
 「日ノ本」(高梁市川上町高山市)。

「火ノ谷」(美咲町大戸下)
「火ノ谷」(鏡野町中谷)
「火ノ谷口」(美作市川上)
「火ノ口」(岡山市北区建部町角石谷)。

釜土

 釜は一工程(一代〈ひとよ〉)ごとに新しく築直されました。
 粘土の良否が製品に大きな影響を与えたようです。

 「鍋土」(岡山市建部町宮地)
 「土取場」(鏡野町中谷)
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配送

 製品は「駄」という単位で呼ばれています。
 一駄(二七貫)を馬の背に振り分けて運んだとされています。

 地名の駄は製品を運送する駄馬のことと思います。

 「駄床・中駄床」(真庭市鉄山。床は場所の意と思われます)
 「駄道」(新見市大佐上刑部)。

 駄と同じ意と思います。

 「馬乗場」(新見市大佐永富)
 「馬飼場・倉馬様(駄馬の守護神を祭った所でしょうか)・馬背・馬綱」(新見市大  佐上刑部)。

鍛冶・鋳造

 鍛冶は金打(かぬち)が語源と言われていますので、金属を打ちきたえ、色々な器物 を作ること(またはその人)を言います。

 鍛冶地名では「鍛冶屋」が一般的ですが、「梶」が当て字された地名があります。

 鋳造では「鋳物師」・「芋」が多い地名です。芋はイモジのイモの当て字と言われて います。

鍛冶

 「鍛治谷」(瀬戸内市邑久町福谷)
 「カジヤ谷」(新見市大佐大井野)
 「鍛冶屋」(井原市美星町三山・総社市中尾・笠岡市小平井・岡山市東区上阿知)
 「鍛治屋敷」(真庭市下見・同上中津井)
 「梶屋」(赤磐市滝山)
 「梶屋谷」(真庭市樫西)
 「梶尾」(岡山市北区御津中山)。

鋳造

 「鋳物師谷」(総社市三因・真庭市三坂)
 「鋳物師畑」(真庭市樫西)
 「金鋳場」(岡山市北区御津町中山)
 「芋迫」(高梁市川上町高山)
 「芋ヶサコ」(新見市大佐上刑部)
 「芋谷」(備前市西片上)
 「芋井谷」(美咲町大戸下)
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ノロ

 ノロはタタラで鉄を生産した際に生じるや、鍛冶・鋳造による滓を指します。

 ノロ地名はその堆積場と思われます。
 ノロと同義のものにカナクソがあります。

 ノロで埋めた土地と思われるのが梅地名です。
 梅は「埋め」の当て字で、ほとんどが産鉄関係地にあります。

 「野路」(赤磐市小鎌)
 「大野路」(高梁市川上町地頭)
 「野呂」(岡山市北区建部町下神目)
 「ノロ谷」(新見市大佐大井野)
 「金屎」(岡山市北区建部町三明寺)
 「鉄屎塚」(新庄村鍛冶屋)
 「鉄糞」(鏡野町上斎原)
 「金久曽」(赤磐市東軽部)。
 「梅ノ木」(美作市川上・備前市佐山・新見市大佐布瀬・新見 市花見・総社市八代)
 「梅ノ木迫」(新見市菅生)
 「梅木谷」(瀬戸内市邑久町福谷・鏡野町上斎原・井原市美星町明治・高梁市川上町下大竹)
 「梅谷」(鏡野町富仲間・岡山市北区建部町角石谷)
 「梅ノ木段」(和気町父井原・備前市吉永町加賀美)。

廃砂

ニゴ

 金洗場で砂鉄を選別した後の廃砂の意と思います。

 濁り水になって流れることから、堆積した処がニゴ(濁)地名になったのでしょう。 大きなタタラ経営者は新田師を抱えていたと言われています。

 「仁五田」や「ニゴ畑」があることから、ニゴ地名の多くは廃砂で作られた棚田と か畑だろうと思います。

 ニゴは色々に当て字されています。

 「穴ニゴ」(新見市土橋。穴とは鉄穴のこと思われます)
 「仁子谷」(新見市菅生)
 「ニゴ畑」(新見市大佐布瀬)
 「仁古」(井原市美星町大倉)
 「大仁悟」(総社市山田)
 「仁五田」(津山市宮部上・真庭市草加部・笠岡市篠坂)
 「古仁期」(鏡野町富東谷)。

 難解な地名です。廃砂の意とする説があります。
 また地崩れによる楔形地形の意という説、川の曲流部という説、撓んだ土地という 説などがあります。

 廃砂の意にしますとニゴとどう違うのかという難点を抱えますが、塩地名が産鉄地 に多いことから、一応廃砂説に従って本項に分類しました。

 しかし次項の「市町村別製鉄小字一覧」に記載している塩地名には廃砂以外のもの も含まれていると思います。今後の課題として残る地名です。

 「塩干田」(真庭市下徳山)
 「塩辛田」(美作市宮本)
 「中シオカラ・下シオカラ・向シオカラ」(真庭市中福田)
 「塩坪」(和気町北山方)
 「塩留」(赤磐市中勢実)
 「塩ノ谷」(新見市大佐大井野・赤磐市塩木)
 「塩田」(総社市下倉・岡山市北区建部町三明寺・和気町塩田・鏡野町原)
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従業員住居地

 従業員には職長の村下(むらげ)、炭の吟味役兼職長補佐の炭坂(すみさか)、炭焚(すみたき)、フイゴを踏む番子(ばんこ)などの諸役があります。

 この人々が住む住居を「山内(さんない)」と言いました。
 山内は治外法権的で地元民とは没交渉であったようです。

 そのためかどうか分かりませんが、山内という地名は

 岡山市北区東山内と同西山内

 がありますが他には見あたりません。

金子

 そのかわり別の地名で呼ばれています。
 金子(かねこ)はタタラ従業員を指す代表的な地名です。

 子は人の意ですが地名では金子が住む住居地を指すことになります。
 金子と同義と思われる地名に「湯子」があります。
 
 「上金子・下金子」(新見市西方)
 「金子」(総社市新本)
 「金子峠」(新見市土橋)
 「金子谷」(岡山市北区御津紙工)
 「湯子峠」(新見市大佐永富)

梨子(なしこ)

 地名では梨子をナシと呼んでいるのが多い。
 産鉄地以外には見あたらないことから、果物の梨の産地地名ではありません。

 梨地名を考える上で参考になるのが、『和名抄』に記載されている「磐梨郡」の「梨」です。

 梨は穴師(鉄穴師)のアが脱落して梨に当て字されたと考えられています。

 そうしますと穴師=梨子になり金子と同義になります。
 従って梨子地名は産鉄従業 員の住宅地名と思われます。

 地名では梨子の子が省略された「梨ノ木」もあります。「木」は接尾語で木の意は ないと思います。

 「梨子ノ木」(美作市右手・井原市美星町三山)
 「梨ノ木谷」(新見市大佐上刑部)
 「梨子ヶ坪」(高梁市川上町七地)
 「梨子ノ木迫」(高梁市川上町仁賀)
 「梨子佐古」(赤磐市平山)
 「梨子嵶」(岡山市北区御津下牧)
 「梨ノ木乢」(岡山市吉村)
 「大梨」(岡山市北区建部町和田南)
 「梨ノ木」(総社市下倉・岡山市南区灘崎町彦崎)
 「梨ヶ瀬」(新見市高尾)。

 語源は「垣内(かいと)」と思われます。住居の「垣の内」の意です。
 垣内はカキウチとも読みますから、柿は垣の当て字と思います。

 柿地名は産鉄地周辺にある場合は金子、梨子と同義で産鉄従業員住宅地名であると考えられます。

 例えば岡山県北区建部町鶴田にある「カキノコサカ」は漢字に直せば「垣ノ子坂」でしょう。

 垣ノ子は金子、梨子とほぼ同じ意と思います。
 当て字の柿地名の多くは「子」が省略され「木」が接尾語的に付けられたと考えら れます。

 柿地名は産鉄地以外にも見受けられるので、次項の「市町村別製鉄小字一覧」には参考地名の欄に掲載しています。

 「柿ノ木谷」(新見市大佐大井野)
 「柿木」(新見市正田)
 「柿ノ木」(高梁市川上町高山市・笠岡市走出・真庭市草加部)
 「柿木ノ坪」(井原市野上)
 「柿ノ木田」(真庭市西茅部・美作市宮本)
 「柿木峠」(真庭市阿口)
 「柿ノ木ノダン」(岡山市北区建部町角石畝)
 「柿之町」(岡山市御津北野)
 「柿木下」(岡山市真星)
 「柿ノ内」(鏡野町寺和田)
 「柿ノ木町」(赤磐市仁堀東)
 「柿ノ木坂」(備前市吉永町多麻)。
 「柿段」(瀬戸内市長船町牛文)

その他

「砂堀」(赤磐市仁堀西)とか「金堀」(赤磐市可真下)という地名があります。
 この地名は砂(砂鉄)堀場、金(砂鉄)堀場の意と思います。

 鬼地名があります(次項の「市町村別製鉄小字一覧」では参考地名の欄に記載して います)。

 鬼地名はそれぞれに伝説を持っていますが、産鉄従業員を指す地名が多いと言われています。

 火の中から鉄を生むという営みが、畏怖の念とともに鬼神の技と思われたからでし ょうか。
 鬼地名は伝説などを調べねばなりませんが未調査です。
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賃金・代金支払場

 この支払場は業者間や地元民との取引の場であろうと思われます。
 砂鉄の採取労務費、炭の代金、釜土の搬入費、井手の補修費などの支払いが考えら れます。

 地名は「勘定」ですが「算場」も同義と思われます。

 「勘定峠」(新見市大佐大井野)
 「勘定」(新見市大佐布瀬・総社市奥坂)
 「算場」(総社市原・同中尾)

その他の地名

ヒナ

 ヒノト(火ノ処)→ヒナタ(日向)→ヒナ(日南・日名)と転訛したと言われ、ヒナ地名は産鉄地の意と考えられます。

 ヒナという単独の地名もありますが、山、谷、平、カマ、金洗場などにくっついているのが特徴です。

 「ヒナガマ」(新見市大佐大井野)
 「ヒナ二段」(真庭市五名)
 「釜ヶ谷日名平」(真庭市草加部)
 「日向佐古」(和気町田賀)
 「日南山」(岡山市北区建部町田地子)
 「金洗ヒナ」(高梁市川上町七地)。

朴(ほお)

 伯耆には各地に楽々福(ささふく)神社が祭られています。
 そのうちの東楽々福神社・西楽々福神社(日野郡日南町宮内)は、朴ノ木がご神体 とされています。

 氏子は朴歯の下駄を履いてはならぬという禁忌の伝承があると言われています(谷 川健一編『金属と地名』坂田友宏氏執筆)。

 楽々福神社が製鉄神であることは前に触れましたが、朴ノ木と結びついています。

 また高岡神社(真庭市上中津井)・垂水神社(真庭市垂水)にも朴歯の下駄の禁忌 の伝承があると前掲書は伝えています。

 製鉄神と結びついている朴ノ木と、産鉄地にある朴地名は関係が深いと思われます。 朴地名は産鉄地以外には見あたりません。

 しかし製鉄神を祀った地名なのか、産鉄地地名なのか明らかではありません。

 「朴ノ木谷」(新庄村戸嶋)
 「朴ノ峪」(鏡野町富仲間)
 「朴谷」(真庭市樫東)
 「ホウノ木」(井原市美星町上高末)
 「ホフ塚」(新見市大佐小坂部)。

 谷川健一編『金属と地名』の「出雲・石見における産鉄」(白石昭臣執筆)に記述 されている鶯地名に関する伝説を紹介します。

鳥取県西伯郡名和町門前に、鈩などの産鉄地名とともに鶯谷の地がある。
この周辺は孝霊天皇と鉄と鬼にまつわる伝承地であり、孝霊にちなんで高麗山という山があり、その近くにこの門前が位置する。
この天皇は血族の鶯王に鬼退治をさせ成功するが、しかし王は討ち死にする。
よってこの鶯王を祀り、ササフク(楽々福)大明神として崇めたという。

 このような伝説が生まれる背景には、産鉄と鶯とは何らかの関わりがあったのに違いないと思います。
 しかしこの地名も製鉄神を祀った地名なのか、産鉄地地名なのか明らかではありません。

 鶯はホウキとも言われています。

 「鶯谷」(新見市菅生)
 「鶯逧」(岡山市北区建部町三明寺)
 「箒尻」(新見市石蟹)
 「箒迫」(真庭市五名・井原市野上)
 「ホウキ」(新見市正田・井原市美星町明治)。

以上の解説は簡略で意をつくしたとは到底思えません。
また私の解釈の間違いもあろうかと思います。いろいろなご指摘をいただけますなら有り難く思います。
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市町村別製鉄小字一覧

(準備中)

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