地名をキーワードにして地域の歴史を掘り起こすページです

鍋蓋

鍋蓋

鍋蓋とは

 鍋蓋といえば台所用品の鍋の蓋が一番に頭に浮かびますが関係はありません。

 鍋地名に千種鉄で有名な兵庫県宍粟市千種町の「岩鍋」があります。
古代人は鉄のことを岩のように固いと考えたようですから、岩鍋は 鈩の意と推測できます。鍋蓋の鍋も鈩の意と思います。

 「蓋」について参考になるのが、

  • 美作市川上の「藤蓋

 です。

 蓋は砂鉄を選別するため藤の筵を川底に敷いた状態を意味していると思います。
 従って地名の鍋蓋は砂鉄を採取したところの意になります。
 藤蓋と鍋蓋は同じ意と考えられます。
 (前項で掲出した地図を再掲します)

  画像の説明
    鍋蓋と関係する地名地図

 地図にある鍋蓋の位置は盆地内で最も低い場所で、備前市佐山、瀬戸内市飯井・東須恵の山から流れでる雨水がすべて集まる場所です。
 当然風化した花崗岩から流れでた砂鉄も集まります。
 

鍋蓋周辺の砂鉄産地地名

地図を参照して下さい。

足ヶ坪

 足ヶ坪は鍋蓋の上手にあります。
 足はの当て字で、芦の根には鉄バクテリアの作用で鉄分が付着することから産鉄地名になっています。

 足ヶ坪は鍋蓋がかんな流しで砂鉄を採取した場所であることを裏付けていると思います。

 芦地名では兵庫県芦屋市、福岡市芦屋などがあり産鉄地名と言われています。

知原

 知原は足ヶ坪の上手にあります。
 知は茅(ち)の当て字で、チガヤのことで菅(すげ)などの仲間です。

 知原という地名は県内には外に見あたりませんが、菅地名は産鉄地に大変多い地名です。

  • 真庭市鍛冶屋の「菅ヶ谷」
  • 総社市延原の「南菅・北菅」

 など枚挙にいとまがありません。

 当地の知原は鍋蓋や足ヶ坪の上手にあることから、芦や菅と同じように産鉄に因んだ地名と考えられます。

勝負谷

 高畑山の南の谷にある地名です。
 鉄の意である「ソブ」がソウブになり、更にショウブに転訛して「勝負」と当て字されたものと考えられます。

 県内には「菖蒲」と当て字されたものが最も多く、次いで勝負地名が各地にあります。勝負谷は産鉄地名です。

寒風

 瀬戸内市牛窓町内にもある地名です。
 サムカゼと発音しています。寒は寒川(サムカワ)という地名になって全国的に点在する産鉄地名です。

 あるいは寒風は前記のソブから転訛したソウブの当て字かも知れません。
 地名では寒はソウとも読みます(備前市寒河はソウゴと読みます)。
 風はブとも読みます(屏風などがあります)。いずれにせよ産鉄地名と思います。

金ヶ平

 金(かね)は金・銀・鉄・銅などの金属の総称ですが、この地名の金は鉄(砂鉄)のことです。

大笹

 笹地名は各地にありますが、植物の笹は人々の営みの中で地名になるほど必要なものではありません。

 ササは「笹」・「佐々」・「佐作」・「楽々(ささ)」などと当て字されて地名になっています。

 伯耆地方で祭られている「楽々福(ささふく)神社」は製鉄神として尊崇されています。楽々(ささ)は砂鉄の意、福は鈩を吹く意とされています。

 砂鉄産地名には菖蒲・菅・葦・桜などの植物地名が多くみられます。笹も産鉄地名と思います。
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製鉄神を祭った山

カジヤ林

 地図の「カジヤ林」は東斜面に、「ノベ山」・「桜林」は西斜面にあります。その頂上に現在は祇園社と龍王宮を祭っています。

 カジヤ林・桜林のハヤシは古い語で『和名抄』には伊予国越智郡に「拝志(はやし)郷」、讃岐国山田郡に「拝師(はやし)郷などがあります。

 はやしについて『出雲風土記』秋鹿郡の項で「足高野山」の解説に、

…上頭(みね)に樹林(はやし)あり。此は即ち神の社(もり)なり

 とあり、はやしは古代から神が籠もる森の意とされています。
 カジヤ林は鍛冶屋神を祭った森の意と思います。

ノベ山

 「ノベ山」のノベはなべ(鍋)が訛ったものと思います。
 その好例に千種鉄で有名な兵庫県宍粟市千種町に、鉄の大産地である「岩鍋」があります。
 現在は「岩野辺(いわのべ)」になっています。なべがのべに訛ったものです。
 この一例から当地のノベ山は鍋山が訛ったものと推測するのは危ないと思いますが、蓋然性は高いと考えます。

 なべは前記の鍋蓋の鍋と同じで鈩のことと思われることから、ノベ山は製鉄神を祭った山の意と考えられます。

 あるいはノベ山は北風が吹き上げる斜面にあることから考えると、露天タタラで製鉄が行われていた場所かも知れません。

桜林

 桜林の桜は桜の木のことではありません。
 サクラはサ・クラでサもクラ砂鉄の意で桜を当て字にしたものと思います。
  砂鉄産地に多く見られる地名です。

  • 新見市菅生の「桜・大桜」
  • 岡山市角石谷の「桜ヶ坪」
  • 倉敷市稗田の「桜神」

 など桜地名は枚挙にいとまがありません。

 桜林は桜神と同じ意で、製鉄神を祭った林のことと思われます。
 ここはノベ山の山裾にあることから、北風が吹き上げる場所なので、露天タタラが行われ守護神として桜神が祭られていたのかも知れません。
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