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高畑山

高畑山

高畑山とため池

 長船町東須恵本村の上手に、大池・中池・妻池・小屋ノ谷池の四つの池があります。貯水量は約20万立方㍍で約35㌶の水田を灌漑しています。

 谷の上手に向かって左の山が高畑山です。標高202㍍で際立った特徴もなく、外観はごく普通の山塊ですが、この山に降り注ぐ雨水はすべて大池に流れ込みます。

画像の説明                                                                                                                                                                                       高畑山と大池 

 自然の流れでは大池に取り込めない斜面には水路を作って導入しており、大池の大きな水源になっています。

 この山には、龍王宮と鍋森神社を祀っています。雨乞いには火焚きの行事が行われますが、近年行った年はありません。

 毎年7月19日は例祭日で、鍋森神社の幟を立て農家が参拝し、宮司が祝詞を奏上して順雨を祈願しています。

 大池がいつ造られたのか分かりませんが、造ったのは秦氏であろうと推測できます。大池の水源である高畑山は、「高秦山」の意と推定できるからです。

 「高」という尊称を自らの氏族名秦氏に冠し、誇りをこめて高畑山と命名したのだろうと思います。

 この山に順雨がもたらされ、大池が絶えず満水になるよう願いをこめて雨乞いの神を祀ったのも秦氏に相違ありません。

トンボ石

 大池の底には大きな岩があり「トンボ石」と言います。
 この岩には伝説があり、

昔の話じゃが、東の山から大きな岩が空を飛んでな、大池へ落ちたんじゃそうな。それでトンボ石とゆうんじゃ

 と伝えられています。

   画像の説明
       トンボ石
 この伝説は高畑山に祀られた龍王宮を池の底に勧請し、磐座として祀ったことからこの伝説が生まれたものと思われます。
 高畑山に祭っている龍王宮は本宮と考えられます。

 毎年田植え時期になり落水を始める日に、水利組合の役員が堰堤に集まり、池に酒を注いで龍王に捧げ直会(なおらい。神と飲食を共にすること)を行います。
 満々と水を蓄えて頂いたことに感謝しかつ豊作の祈りを込めた神事です。

 トンボ石の写真は、平成17年に十数年ぶりに池を干したとき、露出したトンボ石にしめ縄を張り酒を供えて祭ったときのものです。大きさは底辺で縦約100㌢、横約60㌢、高さ約65㌢です。

雨乞いの神鍋森神社

 鍋森神社は高畑山に祭られています。瀬戸内市牛窓町にもあり雨乞いの神です。
 兵庫県宍粟市千種町の鍋ヶ森神社は雨乞いの神として有名です。

 鍋森は鍋の形をした森の意ではなく、鍋は鈩のことで製鉄神金屋子神を祭っていた森の意と思います。

    画像の説明
    鍋森神社(石造)と竜王宮(瓦社)

 天明4年下原重仲が書いた『鉄山秘書』の「金屋子神祭文」に、

播磨ノ国の志相郡(しそうこおり)、今の岩鍋と云う所に、高天原より一はしらの神天降り座す有り。人民(たみくさ)驚きて如何なる神ぞと問いまつる。神託(つ)げて曰(のたまわ)く、吾(あ)は是れ作金者(かねたくみ)金屋子の神なり…。

 更に

…故(かれ)、民集まりて雨乞ふ所を成(つく)り、雨を祈るに、先ず金神(かなかみ)を祭れば、金、水を生みて雨降る事、神の教えがまま也。丹(あか)き誠を抽(ぬきん)でしかば、雨頻りに降る。時は七月(ふみづき)七日の申(さる)の上刻(さかり)なり。

 と記述されています。

 要約しますと播磨の国宍粟郡岩鍋(鉄の大産地)に製鉄神金屋子神が降臨したことと、金屋子神に降雨を祈ったところ雨が頻りに降ったとなります。

 金屋子神が雨乞いの神になったのは、鉄は感電しやすく落雷することを知った古代人が、鉄には雷雲を引き寄せる霊力があると信じたのではないでしょうか。

 雷雲は雨雲ですから後に雨乞いの神しとて祭られたと推測できます。このことが「金屋子神祭文」の伝説になったのでしょう。

 兵庫県宍粟市の鍋ヶ森神社も当地の鍋森神社も祭神は金屋子神と考えて間違いないと思います。

 祭ったのは大池を造った秦氏であることは当然と思います。当地と同じ鍋森神社を祭っている牛窓町鹿忍の地名に「半田(秦が訛ったもの)」があり、秦氏集団が活躍していることが参考になります。
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