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[瀬戸内市の地名と人々の営み]2.4.邑久町虫明の黒井山

邑久町虫明の黒井山


黒井山

黒井山の地図

黒井山の地図(『邑久町史』地区誌編字界図参照)

 黒井山は道の駅黒井山(グリーンパーク)の東西南北に広がる大きな地名である(地図参照)。
 黒の地名は産鉄地に多い。
 「黒田」赤磐市多賀。
 「黒尾」岡山市東区瀬戸町弓削。
 「黒谷」総社市久代。
 「大黒山」倉敷市木見。
 「黒取山」真庭市樫西。
 などがある。
 黒の地名は産鉄地に多いことから鉄の古称であるクロガネの黒と考えられる。黒井山は産鉄地名と推測できる。虫明の地元の方の話によると、現在も黒井山で鉄分が採取できるそうだ。


しょうぶ谷

 しょうぶ谷は黒井山の真ん中辺りにある地名である(地図参照)。鉄の意であるソブがソウブになり、更にショウブに転訛したと考えられる。
 県内には菖蒲と当字されたものが最も多く、次いで勝負地名が各地にある。しょうぶ地名は先に掲載したが再掲する。
 「菖蒲ヶ谷」新見市大佐大井野。
 「ショウブ坪」高梁市川上町仁賀。
 「菖蒲ヶ迫」井原市美星町明治。
 「勝負砂」総社市久代。
 「勝負峪」真庭市目木。
 「菖蒲谷」備前市閑谷。
 などがある。
 虫明には黒井山・しょうぶ谷の他に産鉄地名は見当たらない。鉄滓などの遺物も出土していない。虫明の西隣の福谷に鍛冶谷と芋谷がある。芋谷の芋は鋳物の「の」が省略され芋に宛字されたもので鋳物谷の意である。
 因みに高梁市川上町高山に「芋迫」、新見市大佐上刑部に「芋ヶサコ」などがある。両者とも周辺は大きな産鉄地である。
 このように黒井山の隣に鉄製品の産地があることから黒井山・しょうぶ谷の産鉄でたたら製鉄が行われたとの推測は可能であろう。
 虫明は港で栄えた。平清盛の父忠盛(一〇九六~一一五三)が立ち寄り、
  虫明の迫門(せと)の曙見る折ぞ都のことも忘られにけり
 と詠んだ。港で栄えたのは当時の先端産業であった鉄で活況を呈していたためだあろうか。


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