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[瀬戸内市の地名と人々の営み]2.3.邑久町本庄の岩鍋・勝負谷・鐘鋳場

邑久町本庄の岩鍋・勝負谷・鐘鋳場

 本庄の静円寺南北の両斜面には産鉄関係の地名が多い(図を参照)。 

邑久町本庄地区の産鉄関係地名図

邑久町本庄地区の産鉄関係地名図

岩鍋
 岩鍋の地名で最も有名なのは兵庫県宍粟市千種町の岩鍋で鈩製鉄の大産地であったことは度々書いた。鍋は鈩の炉のことである。前項で書いた鍋蓋の鍋と同じである。当地の岩鍋は鈩の意と思われるが鉄滓などが未発見なので確認はできない。

勝負谷
 産鉄地名である。前項を参照されたい。

鐘鋳場
 横尾の静円寺には三十三坊の堂塔があったとされている(『邑久郡史』)。当然鐘や仏具の鋳物製品の需要が大きかったことは想像に難くない。これらの製品が鐘鋳場で造られたことは充分考えられる。
 県内には類似の地名に、
 「鋳物師谷」総社市三因・真庭市三坂。
 「鋳物師畑」真庭市樫西。
 「金鋳場」岡山市北区御津中山。
 などがある。

福谷
 福地名は特に吉井川水系に多い。福は「吹く」の宛字で鈩や鍛冶を意味している。
 「福岡」真庭市阿口。長船町福岡。
 「福ノ原」美作市古町。
 「福谷」備前市吉永町福満。
 「福谷」瀬戸内市邑久町福谷。
 「福井」備前市西香登。
 などがある。

蟹ヶ谷  
 前記の福谷に接している地名である。沢蟹などの蟹が地名になることはない。鍛冶が転訛してカニになり蟹に宛字されたと考えられる。福谷に接しているので鍛冶の可能性は充分にある。邑久町福谷に鍛冶谷があるのと同じである。

佐井田
 佐井田は本庄内の集落名である。佐井田は佐井と田が合成した地名であろう。田は水田の意の他に場所を意味する田があることから、佐井田は佐井がある場所と解することができる。
 サイの地名に岡山市北区建部町三明寺に「大サヒ」がある(サヒはサイの歴史的仮名遣である)。因みに三明寺は鉄の大きな産地である。
 サイと同類と思われる地名に前項の「サナ」がある。更に同類の「サム」に牛窓町長浜に寒風(さむかぜ)があり、岡山市北区建部町大田に寒砂(さむすな)がある。寒砂の砂は周辺の産鉄地名から推測すると砂鉄の意と思われる。これらの地名を考え合わせると佐井田は鉄を産する所の意と推測できる。


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